平成25年度事業 古墳見学会(橿原・飛鳥地域)
平成25年9月29日(日)
今回は平成23年度に堺市・桜井市を訪れて以来の大和王権発祥の地である奈良橿原・飛鳥地域の見学会である。その中でも、今回の見学会のメインとして奈良県立橿原考古学研究所付属博物館内の遺物の見学を計画した。岐阜より奈良へのバス運行の途中では、考古学に詳しい会員による事前学習も行い、見学箇所の歴史編年、時代背景、推定埋葬者等の講義を受けた。
博物館内の展示遺物は国内有数のものであり、王権発祥以前より旧石器時代を含め連綿と古の人びとの暮らしの痕跡が残されていた。しかしながら、古墳時代以降後世に事績を残すべきすべも当然存在したであろうことは想像に難くないわけであるが、館内における「表現物件」は太安万侶墓誌が最古のものであった。これはその当時の「日本人」の美意識とでも表現したら良いのであろうか。その後の「日本」においては現在に至るまで他国の文明の利器である「漢字」という伝達手段によって多くが語られてきている訳である。
バス車内での解説にもあったが、古墳の構築、石棺、埋葬品の遺物である土器・須恵器・装身具等について、時代を下るにしたがって簡素化され本来の用途に合った形・内容から離れてきているので、遺物の編年を決める手がかりとなるとのことであった。現代に通じることでもあるが、機能重視となるのはやむを得ないことかもしれない。幾多ある装飾品の緻密さ、圧倒的な巨大埴輪の迫力、巨大横穴式石室の威容、現代人の思考・想像力をもってしては到底及ばない事象ばかりである。これら古の人びとの残したものは、千数百年を経た現在でも何らの遜色なき威容を放ち続けていることをひしひしと感ぜられた。過去のものは時間的には過去であっても過去の「もの」ではないのである。遺物は常に我々に何ものかを語り掛けているはずあるから、我々もそのかすかな声を聴く心の耳を持ち、未来に生かす智恵を働かすべきかと思われる。今回の見学会で詳細な解説をしていただいた橿原考古学研究所友史会および明日香村観光ボランティアガイドの皆様には、この場をお借りして御礼申し上げます。
1)橿原考古学研究所付属博物館